株式会社マーナさんをご存じでしょうか。あの魚の形のスポンジ、あの引っ張るだけでシュパっと畳めるエコバッグ、あの・・・とヒット商品に事欠かない、あの会社です。(株式会社マーナ marna.jp)
大変ありがたいお話だったのですが、マーナさんから声をかけていただき、コーヒー器具の開発に参加させていただく次第となりました。がんばって開発のお手伝いをしまして、このたび「Ready to」シリーズということで一連のコーヒーの器具が発売となりました。
このウェブサイトのショッピングページでReady to ドリッパーを買う
(株)マーナのウェブサイトで Ready to シリーズ紹介ページを見る
きっと、いろんなメディアで商品そのものは紹介されていくと思いますし、いろんなお店で商品を見かけることがあると思います。僕も一生懸命アイデアをしぼって、検証して、いいものを作るお手伝いができたと思うで、ぜひ気にしてみてください。
というわけで、ここでは、僕と、マーナさんで開発に携わった3人の座談会をお送りしたいと思います(もちろんもっとたくさんの人が関わって商品化されているのですが、メインのお三方、ということです)。ざっくばらんな、開発の裏話をご紹介しますので、Ready toシリーズを手に取っていただくときに、ぜひこのエピソードを思い出してくださいね。きっと、もっと愛着がわくと思います。
それでは、登場人物をご紹介します。
杉内”ホゼ”滋
サンシャインステイトエスプレッソ 代表
代表的なプロダクト・・・毎日コーヒー豆焼いてたり、コーヒーの大会に関わっていたり
岩崎有里子
(株)マーナ 開発部 プロダクトデザイナー
代表的なプロダクト/トーストスチーマー
菊田みなみ
(株)マーナ 開発部 プロダクトデザイナー
代表的なプロダクト/Shupattoコンパクトバッグ
河田香織
(株)マーナ 開発部 設計グループ
代表的なプロダクト/調味料ポット
今日はいろいろざっくばらんなお話をしていきたいと思います。まず聞きたいのは、なんでマーナさんがコーヒー業界に参入したんでしょうか?ということです。
お掃除のツールは昔からやってて、そこにここ10年くらいでしょうか、キッチンのツールというのがたくさんラインナップされて、そしてその家事の合間のひと息、というようなイメージでコーヒー関連というような話は出ていたんです。だから従来のラインナップから繋がっている感じです。
コーヒーって、マーナさんの看板アイテムの魚のスポンジとか、いまヒットしているシュパット(※エコバッグ)とかと違って、ちょっとご家庭でマイナーな分野のような気がしているんです。スポンジの無い家は無いし、今エコバッグ持ってない人もいないでしょう。でもコーヒー器具が家にあるっていう人は少数派だと思うんですよね。僕はコーヒー豆をずーっと売ってて、これはニッチな商売だなあと思っているくらいで。だからコーヒー器具がホームラン級の売れ行きでも、マーナさんの従来のアイテム群からすると小さなヒットくらいになるんじゃないかなと。よくこのジャンルに飛び込んできたなーって思うんですよね。
それでもたくさんのメーカーさんがいろいろなアイデアを盛り込んで商品を投入されいている市場っていうのは私たちも認識してて、私たちが新規参入するには、何か違った切り口というかアイデアが無いと、なかなか入っていけないぞ、というのはありました。その中で今回、良いアイデアを思いついて、サンシャインさんと共同で詰めていくことで、競争力のあるプロダクトになるはずだということで、よし、スタートしようってことになったんです。
ほっとするようなアイテムということで、喫茶というジャンルはすごくいいんじゃないかというのはありました。お茶とか、ほかの飲み物ということもアイデアとしては出てたんだけど、その中でやっぱりコーヒーを飲まれる方が多いので、コーヒーで行こうと。
そうですよね、コーヒー飲むひとは多いんです。ほんと。コーヒー毎日何杯も飲む人って普通にいるのに、自分で淹れる人って少ないじゃないですか。僕らの業界でも悩みなんですけど、飲む人に比べて圧倒的に淹れる人が少ない。
そこでコーヒーを淹れるっていうのをマーナが手掛けることで、ぐっと身近に感じてもらえればと。それが出来れば私たちのプロダクトにも存在価値が出てくるだろうと。
コーヒーは絵になるっていうのもあって。コーヒータイムって、家の中でちょっと絵になる、そういうアイテムだからやりたいっていうことでした。どんなにがんばってもそこにこだわりが盛り込めないようなものであれば、やらなかったと思うんですけど、コーヒーはこだわりがあるじゃないですか。
最初に話を貰ったのがいつでしたっけ、もうけっこう前だなあと思うんだけど。そのときは三人ともコーヒーってあんまり詳しくなかった?
飲むことは飲むんですけど、これなんか美味しい?美味しいのかなー?って感じでした(笑
ほとんど教わって成長したって感じです(笑 ぜんぜん詳しくなくて、そしらら河田がサンシャインさんに行ってみよう、あそこの人すごいっぽいよ、って言うんですよ。なんか審査員とかやってるよってそんなことまで調べあげて(笑
ちゃんとやんなきゃダメだーってことになって。私たちコーヒーのプロじゃないから、コーヒーって美味しいねって飲むものだけどそれが本当にどうなのかってよくわからなくて。だからちゃんと教わりながらやらなきゃって思って。デザインだけじゃなくて、ちゃんと機能として美味しく淹れられないといけないなと。
話をもらったときはちょっと悩みましたねー。ドリッパーって枯れた技術なんで、これ何かできるかなーって本当に悩みましたね。もう何も新規性のあるアイデアなんか無いんじゃないか、メソッドも出尽くしてるしなーって思いましたもんね。でも皆さん熱心なんで何かやれるかなーって思って協力しようって最終的には思ったんですけど。
それで最初に、会社に来てもらってコーヒーの基本みたいなセミナーからスタートしたじゃないですか。あれが無かったらぜんぜん進まなかったと思います。ホゼさん最初に抽出の仕組みとか教えてくれたじゃないですか、そのときぜんぜんわからなかったけど、何回も聞いて教えてもらって、ちょっとずつ「あーそっか、これかー」ってなって、その積み重ねが効いてる気がします。
(話が始まってしまってから、テーブルの上にReady to ドリッパーが置いてあることに気が付いて)
じゃあせっかくなんでコーヒーを淹れてみましょうか。つくった人が淹れますーって絵で。
誰が淹れます?
それはやっぱり岩崎さんで。
あっ、ペーパー大きいの用意しちゃった・・・
いいでしょう、きっとご家庭でもそういうシチュエーションありますよ(笑
岩崎さんがドリップしています。
ドリッパーの機能がうまく働き、ペーパーのサイズが違っていたのに、上手に淹れられました。
秤も温度計もタイマーも必要ありません。むずかしいところはドリッパーに任せてラクチンに淹れられます。
しかし大変でしたねー。よくここまでこぎ着けた(座談会は、発売前ですが、だいたい先が見えたところでやってます)。
大変でしたー!本当に何もわからないところからの出発で、しかもコーヒーには新規参入なので、大変でした。でもそのぶん、はっきり言って力入ってます。
はんぱなものは出せないぞ、ということで。
じっくりやったっていう感じがありますね。納得するまでアイデアを磨いて出したっていう感じ。ひとまずやりきったっていう感じはあります。
家庭用品だと、自分たちが普段よく使ってて、ここをこうしたいとかそういうアイデアはたくさんあって、それを形にしていくっていう感じなんですけど、コーヒーの場合はまったくゼロからやらなきゃならないっていうことで、まずベーシックな勉強から始めて、アイデアを煮詰めていくって感じで、途中で「もう一回練り直そう」とか何回もあって。
だからパッケージとか、販促とかも力入ってますよ。このシリーズはマーナの新しいジャンルということで、世界観も打ち出していくという力の入れようです。
私このタイミングで違う仕事でも忙しくしてたんですけど、どうしてもこっちもしっかり関わりたくて。
御社の社長に、けっこう前にお会いしたときに、岩崎と菊田はうちの4番バッターだから、任せとけば大丈夫だっておっしゃってたんですけど。わかる気がします。
えーホゼさんにそんなこと言ってたんだー(照
岩崎さんは社歴も長いけど、すごいヒットも連発してて、尊敬してます。
私と菊田さんは扱うものがちょっと違うんですけど、おなじデザインの仕事ということでは菊田さんのアイデアやセンスはすごいなと思う。あと、私たちはデザインをするけど、実際それをどうするかっていうのは設計の河田さんがいないと形にならないので、両輪で仕事をしているって感じです。
社長がおっしゃったからってことではないんですけど、マーナさんの4番と仕事するとなれば、こっちもきちんと協力できればきっといいものができるって思ったんですよ。むしろきちんと協力しなければいけない、みたいな使命感を持ってしまいました(笑
逆になんでウチに相談しようって思ったんですか。東京にもっと有名なコーヒー屋さんたくさんあるけど。
ちゃんとリサーチしたんですよ、コーヒー屋さんもいろいろあるじゃないですか。
まあいろいろありますねいろんな意味で(笑
近所っていうこともあって何回かコーヒー買いに行ってお話させてもらって、最初の頃にもう、あ、この人ちゃんとしたこと言ってる、って思ったんですよね。でもそういうカンって当たる。
ほかのコーヒー屋さんも行ったんだけど、ぶっちぎり美味しかった(笑
美味しいに勝るものは無いと(笑
河田さんが目をキラキラさせて「あそこ美味しいよ」って来るの(笑
まあそれだけじゃなくて(笑)、おっしゃることが非常にロジカルで、腑に落ちるという言い方がフィーリングに合ったということもあります。私は設計なので、イメージだけで言われても困るということもあるし、いつもしっかり筋道立ててお話をしていただけるので、信用できるなって思いました。
最初のセミナーのあとね、本当にあのセミナーをやってもらって良かったって思ったよね。話がぜんぜんわからなくて内容も濃くて、受験の時みたいに頭プシューってなったけど(笑
ほんとに良かった、あれで確信したよね。間違いじゃなかったって。
私たちの理解も悪くて、あのあとも同じことを何回も聞いてると思うんですけど、でも最初にあのセミナーをやってもらって、ベースになるものがあったから、間違いない方向に来れたって思ってます。
おさかなのスポンジあるじゃないですか、あれ、愛用してるんです。よく汚れが落ちる。安物の買うとすぐダメになって、汚れ落ちもよくないし、結局すぐ次の買わなきゃで、おさかなのスポンジを長く使うほうが結果的に安いし面倒が無い。そういうちゃんと考えられているプロダクト、それもデザインがいいでしょう、そういうものを作る会社から声を掛けてもらって、コーヒーのプロダクトをいっしょに作るって、すごく頑張らなきゃって思ったんですよ。基礎からしっかりやっていかなきゃって。
本職のコーヒー屋でもそこまで突っ込まないところまで教えて、それでも食いついてきてくれたでしょう。これは本物だって思った。
ホゼさんもすごい熱量で来てくれたから、こちらもさらに力が入ったっていうのもあります。
いや三人とも熱量すごいですよ、これは社風なのかな。
いいもの作りたいって言ってもなかなか最後までしっかりといいものをリリースするって、効率とか考えると難しいのかなと思うんですけど、ウチはそういうのができる会社だと思います。三人とも、そういうところでは、マーナに居て良かったーって思ってます。
そういうマーナさんと、またその中でも熱量すごい三人と仕事ができて本当に良かった!
1時間以上お話に花が咲いてしまい、全部載せたら10ページくらいの量になりそうだったのと、キャッキャウフフなお話もしていたので(ファッションの話から僕の身の上話から、本当に脱線しまくりで、笑いもあり真剣な話ももちろんありの、大変楽しい座談会でした)、マジメなところを抜粋してお送りしました。
コーヒーのドリッパーにはまだまだ可能性があったし、抽出のメソッドも目指す結果によってまた違うアプローチがあったことがわかりました。僕がいままで10年間、ハンドドリップコーヒーの大会(ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ)に関わってきて、その経験や日々のコーヒーの抽出の経験と知恵の蓄積が、このプロダクトに役にたったというのは大変うれしく思います。
また、僕の実績と検証能力に信頼を置いていただき、単なる名前だけの監修ではなく、ドリッパーの基本アイデアから抽出のメソッドまで、岩崎さん、菊田さん、河田さんとともに作り上げることを任せていただいたマーナさんには大変に感謝しています。
そして、このドリッパーが多くの「コーヒーをはじめてみようかな」と思っている皆さんのお手元に届いて、そして「あ、コーヒーを淹れるって簡単なんだ、楽しいんだ」と思っていただけると嬉しいです。またこのアイテム群は生活の中にちょっと素敵なデザインをもたらしてくれますが、決してキッチンやダイニングの雰囲気をじゃましてしまわないひかえめでやわらかなかたちですので、気負わずにお手元において愛用していただけると思います。ぜひ、お使いになってください。
それではこれからの Ready to シリーズの展開にもぜひご期待をお寄せください。
協力:株式会社マーナ 東京本社 〒130-0005 東京都墨田区東駒形1-3-15 Tel: 03-3829-1111